1.積み上げられた石の壁に囲まれた、黒い蔵造りの棟々 2.藏群のスタイリッシュさを鮮烈に印象づけるレセプション 3.こちらでウェルカムティーをいただきながらチェックインしました。ごく近親者のみでウェディングも行えるスペースだそうです。 4.ライブラリー「坤滴湖」には、おそらく30代〜40代の年代とお見受けするご主人のプライベートコレクションであるLPレコード幅広いジャンルの書籍が並び、部屋へ持ち込んで読むこともできる 5.床や壁に自然の素材を使い、シンプルながら居心地は大変いい。窓の外は朝里川の景色 6.卓越した寝心地を提供してくれるベッドルーム。アメニティは寝着のほかに部屋や館内で過ごす作務衣が用意されている。この大島紬を泥染めした作務衣の肌心地は抜群 7.部屋の内湯にも源泉が引いてある。温泉としての特色は強くないが、2人でも入ることができる広さ 8.露天に出ると朝里川の川風が心地よく、対岸の緑を眺めながら、ゆっくり入ることができた 9.藏群の料理は、小樽に水揚げされる魚介中心に、料理長がユニークなエッセンスをふりかけ、藏群独自の味を追求している。XOジャン、ナンプラーなどを隠し味に、伝統的な懐石料理とは一味違う料理を楽しませてくれる。 10.もちろんBarカウンターでいただくアルコール類全てオールインクルーシブです。
建物のインパクトの強い、斬新な「デザイナーズ旅館」としては水上の「別邸仙寿庵」と並んで有名な宿ではないかと思いますが、その内容には雲泥の差がありました。「別邸仙寿庵」も決して悪い宿ではありませんが、その内容は旧態然とした旅館そのものであったのに対し、この「蔵群」は進化した、更にまだまだ進化を期待できる、全く新しい宿でした。様々な雑誌でも紹介されているように、日本では珍しいオールインクルーシブシステムをとったこの宿は、1泊2名宿泊での一人あたりの料金が35,000円(税別)。いい宿に泊まるには当たり前の、この水準の価格で全ての飲み物料金が含まれています。お部屋に用意されたミネラルウォーターやビールはもちろんのこと、食事の際にいただく飲み物、Barカウンターでいただくアルコール類全てです。飲んべの私たち夫婦にとっては、飲みたいだけ飲んだ上にチェックアウト時に請求書を確認する必要がないということは、いくら泥酔してもかまわないに等しい…というのは冗談ですが、なんだかとても得した気分になりました。建物は、非常に大胆なデザインのしゃれたホテル。置かれた家具は部屋によって異なるようですが、李朝家具などアジアンテイストの骨董。中庭のガーデンチェアは、昼間読書をするのにぴったりです。またパブリックスペースの図書室には、おそらく30代〜40代の年代とお見受けするご主人のプライベートコレクションであるLPレコードが並んでいます。食事はもちろん、たっぷり食べきれないほどの小樽の海の幸。でも、この宿の一番の魅力はと言われれば、それは人間力でしょう。私たちが大規模な旅館を好まず、できれば10室以内の小さな宿ばかり選んで泊まり歩くのは、宿のご主人がどんなに素晴らしいおもてなしを心がけていても、目の届く範囲には限界があると思っているからです。人を本当に喜ばせたり楽しませたりできるかどうかは、マニュアルとか努力の問題ではなく、あえて断言するならセンスとか素質の問題ですから、ご主人のホスピタリティをそのままに、全てのスタッフが受け継ぐことは、私は不可能だと思っています。しかしこの、私たちが不可能だと思っていることに限りなく挑戦しておられるのが、この「蔵群」ではないでしょうか。 私は、最初に雑誌でこの宿を知ったとき、どの部屋に泊まろうかとメールを出しました。そのときのメールのやりとりは何通にも及び、たった2泊泊まる部屋を決めるのに、何度も何度も長い打ち合わせを重ねました。そのときの担当が、若く意欲のある濱田さんとおっしゃる青年でした。彼には、滞在中もなにかにつけてお世話になり、私たちが気持ちよく羽を伸ばせるように心がけていただきました。もちろん、彼に限らず、宿のスタッフの皆さん誰もが常に気持ちのいい笑顔で、2連泊の間、宿から一歩も出ずに読書三昧でお酒に溺れている私たちをもてなしてくれました。ご主人とはじっくりお話する機会がなかったので雑誌の記事などの転用なのですが、「宿のスタッフに若い男性が多いのは、ご自分が他の宿に泊まったときに女性に荷物を運ばせるのがいやだったから」だとか、「今でも駅までの送り迎えの車をご主人自ら運転していくのは、お客様の生の声を聞きたいため」だとか、本当にいい宿にしていこうというご主人の真摯な姿勢が伝わってくると思います。もちろん、もっと進化を期待したいところもいくつかあります。欲を言えば、料理だけでも人を惹きつけられる宿になって欲しいし、お庭にテラスがあればもっと気持ちがいいでしょう。Barに本物のバーテンダーがいるわけではないので、食後酒に本格的なカクテルを期待してはいけません。取り揃えたワインについては、地元を愛するご主人が小樽ワインにこだわる気持ちは伝わりますが、こればかりはどうしようもない日本のワイン事情。チリやオーストラリアワインならもっと安い仕入価格で何倍もおいしいものを供することができるはずです。また斬新なデザインだけに、大浴場や客室によっては若干圧迫感を感じる人も多いでしょう。でも、「蔵群」は、これからもどんどん進化していくことを期待できる、将来が楽しみな宿。 「最近、多くのマスコミに取り上げてもらった結果、お蔭様で予約のお客様が引きも切らない。そんな中で、最高のサービスがきちんと提供できているのか、不安に思う。」と前述の濱田さんがおっしゃいました。宿のスタッフひとりひとりにまで、ご主人のホスピタリテイがこうやって共有されている限り、この宿はますます素晴らしい宿へと昇華していくことと思います。