1.世界遺産の五箇山。2mも積もる豪雪地帯、この積雪に耐られるようにと急勾配の独特な屋根をもつ合掌造りが生まれたそうだ。本日の宿「薪の音」はここからほど近く。 2.宿が近づいてくると、そこはもう山並みを借景にした田園風景。秋に色づいた木々のアプローチを通り、三和土(たたき)のスペースに迎えられる。期待通りの赴きある風情。 3.この地で生まれ育ったご主人の家を解体して、薪の音に再生。古い農家の土間のような通路、見上げると高い天井にどっしりとした梁が横たわる。 4.靴脱ぎ石から戸をあけると、景色が一変。思わず「おーっ」とうなった。オーディオの音の響く板張りのホールにはラグがしかれ、ソファーにはあのカッシーナLC2。そのセンスにもうすっかりノックアウトされた気分。 5.通された2階の部屋はゴロリと横になるのにうってつけの畳敷きの小上がりとソファースペースそして、ガラスの仕切りを隔てたベッドルームというつくり。テラスから望むのは、刈入れの終わった田んぼ。里山はきっとどこよりも季節を感じられるところかもしれない。 6.ガラスタイルがとってもおしゃれなバスルーム。チェックインのときからお湯は張られていて微かにお香が香る。田園風景を見ながら入るところは日本中でもここくらいでないか。欲を言えば二人で入るにはジャグジーはもう少し大きいサイズが欲しいところだ。 7.当日のコースから「蟹とアヴォガドのシャルロット」。キャビアののった蟹の下は、アスパラで筒状になっていて、その中からは微かなガーリック風味のアボガドと蟹の和え物が出てきます。とっても美味しいです。この地方の特産である赤カブもすっかりフレンチの一員みたいな顔してます。 8.「帆立貝の白菜包み蒸し」。ほうれん草のソースをベースに包みの中は大ぶりのホタテ、その上にはマツタケやしめじなどの細かく刻んだ茸類がのっていて、これらが包み蒸しされることで素晴らしい風味が生まれています。上に載っているのはウニとパプリカ。きれいですね。 9.メインは「和牛フィレとフォアグラのトリュフ風味」。あぁ、もう感激で言葉もありません・・・。他にも、「日本海のブイヤベース」やデザートもとっても美味しかった! 10.翌朝の朝食はご主人が丹精込めて育てたお米をかまどで炊いて供する。この御飯がまた旨い、焼き魚はなんと高級魚ノドグロでした。旨っ!
里山のオーベルジュ。世界遺産の五箇山から程近く。宿が近づいてくると、そこはもう山並みを借景にした田園風景。ところどころに蔵が建ち、道端にはおいしそうなオレンジ色の柿の実がたわわに実っている。きっと一昔前には日本のでこにでもあった里山の景色。農家の家先に通じそうな細道を入っていくと宿らしい建物が少しだけ見え、“ここだ、ここだ”と近づいていく。いわゆる古民家的な古さを模したものではなく質の良さを感じさせる和の建物は、のどかな田園風景に背後の畑によくマッチしている。秋に色づいた木々のアプローチから三和土(たたき)のスペースに迎えられ、見上げると高い天井にどっしりとした梁が横たわる。なるほど古い農家の土間の様な景色。靴脱ぎ石から戸をあけると、景色が一変。思わず「おーっ」とうなった。オーディオの音の響く板張りのホールにはラグがしかれ、ソファーにはあのカッシーナLC2。そのセンスにもうすっかりノックアウトされた気分。その正面の窓は、たわわに実った外の柿の美を映し出す。ウェルカムティーを持ってきながら「大好きな眺めなんです。」とご主人が話してくれた。昔、おやつなどもらえなかった時代、学校帰りにそこいらにある柿木に登りよく失敬したのだそうだが、この宿にはそんな時代の農家の雰囲気、つまりは主のノスタルジーを息づかせたかったのだろう。とかくため息が出るほどのデザインセンスのいい宿は、その副作用なのか、宿の顔が見えない寂しさ、ある種の冷たさを感じることがあるのだが、その点薪の音には、どこか人間臭さ、家業臭さがにじんでいて私たちを“とりこ”にした。 “とりこ”になったもう一つの理由はもちろん料理です。里山をテーマにした宿で、土間にかまどがあるもんだから、「メインディッシュは白いご飯です」というような、「草喰なかひがし」のような方向性の料理ものかと想像していたら、これが気持ちよく裏切られる。フレンチってあまり食べた経験のない私たちですが、「このシェフなら自分の店持っても十分人気店になるよね」などど訳知り顔で会話が弾む。まぁそれくらいテンションは上がりっぱなしだったのです。 聞けばこのシェフ、ご主人がほれ込んでいるとあるフレンチレストランのシェフから、「この人ならば」と紹介されたひとらしい。一日にわずか3組のみをゲストとするこの宿は、ひとことで言うと肌身にまとったような感覚。私たちが過すのは部屋、サロン、食事どころの3ポイント。温泉地ではないので大浴場も無い。でも不思議となんの不足も感じないのだ。旅館ではなく土地との一体感を感じる大きな一軒家の気分といってもいいかもしれない。 この宿はそもそもご主人さんの由布院への羨望、中でも無量塔への憧れに始まる。それらの宿のご主人たちとのコミュニケーションのなかから宿づくりを吸収していったと言うのだ。そうして生まれた「薪の音」。主の思いを感じ取れるような、でも押し付けがましいところが一つもない穏やかな居心地。ファッションとしての里山ではなく、リアルな田園をバックグラウンドに、上質でそれでいて気取らない空気が流れている。