数年前の夏「すばらしい宿だよ」との知人の紹介で一泊しました。小ぢんまりした宿の風情、狸か鹿が見てるかも・・・と思わせる素朴な景色のなかの野天風呂。さりげなく飾ってある食事処の絵画や写真。眼下にせせらぐ高瀬川。たしか「・・・この料理は・・・」と配膳のつど一品一品、説明をしていただいたように記憶しています。心のこもったすばらしい料理だったことは言うまでもありません。でも、私がそれ以上に感動したのは、部屋のテーブルに「明朝はお起しいたしません。どうぞ心行くまでごゆっくりおやすみください・・・」との一文がさりげなく置かれていたことです。家族経営のこういう宿こそ、心とからだを芯から癒してくれる日本の宿だと思っています。ハイシーズンはいつも満員だろうと自分からあきらめて予約は以後一度もしていませんが、来週、友人たちと黒部へ行く帰り道、３時までに間に合えば露天風呂だけでもみんなを案内して、ちょっぴり鼻を高くしたいと思っています。