壁のように立ちはだかる北アルプスの山々に圧倒されながら、温泉地を緑豊かな奥まですすむ。ここまでくると道を走る車の数もほとんど無い静寂の場所。宿は木々に隠されていたように現れる。

 

木のぬくもりを大事にした館内に身を置いていると、 心から安らいでやさしい気持ちになる。 ロビーには飛騨高山の職人が造った特注のテーブルセットやペルシャ絨毯などが飾られている。素敵な雰囲気だ。

 

全面改装された客室にはトイレ・洗面所が付き快適となった。また到着時にはすでに布団が敷かれておりすぐに横になれるのもうれしい。窓辺のロッキングチェアに揺られながら錫杖岳などの、迫ってくるようなアルプスを眺める。

 

大きく開かれた窓からは くり、もみじ、さくらなどの木々が美しい。宿でのいちばん人気のお風呂。

 

木風呂すきにはたまらないお風呂。湯船からあふれるおゆがとてもなめらか。 夫婦2人で入るにはちょうどよいこのお風呂も窓を大きくリフォームし、四季を彩る木々を楽しみながら入浴できる。

 

いったん玄関を出て、木々の中を歩くとすぐにあるのがこの前の湯。森林浴を楽しみながら入る露天は目にも体にも優しい。前の湯から少し奥にある階段を上がると笠ヶ岳や錫杖岳が眺められる奥の湯もまた格別。

 

奥さんがつくる料理は家庭料理とは一線も二線も画す質の高い料理だが、手づくりの温もりがちゃんと伝わってくる。一品一品、じっくりとその味に心を傾けてみたくなる。

 


料理の内容はそのとき採れる食材でコロコロ変わるが、ある程度定番的に食べれるものもある。「岩魚の笹包み焼き」は腹に自家製みそをつめて笹にくるんで蒸し焼き状態にする。品のいい香ばしさに感服。

 

そしてもうひとつ、飛騨牛のローストビーフ、これは涙ものだ。肉の旨み、脂のさわやかさ。こんなローストビーフは初めてだ。

 

見せかけのきらびやかさにたよる宿は1泊したらそれ以上の魅力を感じないが、気負わずにこれて、2日でも3日でも1週間の滞在でもしてみたい気分にさせる宿、一生付きあって行ける宿って、きっとこういうことなのでしょう。

 

 

 新穂高温泉の一番高いところ、ここまでくると道を走る車の数もほとんど無い静寂の場所。山の旅舎 中尾平は木々に隠されていたように現れる神秘的な宿 だ。先代がこの地に惚れこんで、宿をはじめて約30年。宣伝らしい宣伝はやっておらず、今なお知る人ぞ知る宿である。車を停めると、いつも見慣れた顔が迎 えてくれる。というのもこの宿は部屋数わずか6室の小さな宿で、通常はご主人と奥さんが切り盛りする。ならば民宿やペンションのようか感じなのかと言うと そうではない。“家庭的なもてなし”とは聞こえのよい言葉であるが、それが低い接客クオリティーの言い訳であったり、馴れ馴れしすぎたりで逆に窮屈な思 い・・・なんて心配は、ここではいらない。プライベートな時間をいかに心地よく過せるかについて、見えないところで結構気を使ってくれている。清掃の行き 届いた絨毯を素足であるけるスリッパ不要の館内。一部には温泉の熱を利用した床暖房もあり快適。ロビーには飛騨高山の職人が造った特注の家具が仄かな明か りをうけて温かく光る。全体的に木のぬくもりがあふれていて、しっとりと落ち着いた雰囲気だ。木枠の窓がスキモノを虜にしてしまう。部屋に落ち着くと、窓 からの景色は豊かな木々を透かして錫杖岳などの眺める。森の中の別荘気分だ。 この宿あまり奇をてらうことがないのだが、驚きなのが4つの内湯と2つの露 天風呂、その全部が貸切風呂になってること。しかも近頃の貸切風呂ブームより何年も前からだ。「お風呂の数を部屋数と同じにしたい」というご主人の願いが この春にやっと実現した。弱い硫黄の香りがするお湯は、お風呂から上がった後も体の中からじわじわあったまってくる。ここ山の旅舎 中尾平は知人の別荘に 寄せてもらったような感じ。しかし馴れ馴れしさとは別のもので、程よい距離を保ってくれながら、温かさ、安心感を与えてくれる。そんなもてなしに共感し て、ここを自分の別荘だと思ってふらっと遊びに来るリピーターも少なくない。一生付きあって行ける宿ってきっとこういう雰囲気なんだろう。

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