山道を行き止まりまで進むと、渓流沿いの自然豊かな山間に昔からの湯治場の面影を残す静かな集落が現れた。3 軒の宿が寄り添う。 お目当ての宿は、2004年4月に全面リニューアルされた木造の宿。

 

2004年4月リニューアルのこの宿、桐敷きの廊下や階段はふわりと軽やかな明るさがあり、所々に置かれた時代のありそうな調度品が空間を引き締める。スリッパ不要のこの床を素足で歩く。足裏の感触は存外気持ちいい。

 

ガラス傘の裸電球に照らされて浮かび上がるちゃぶ台。素朴でノスタルジックな感じの中にアジアンテイストのソファーが面白くマッチする。 桐の小ダンスからはアメニティ類にふかふかバスタオルがうれしい。

 

予約制の貸切は無料で借りられる。こちらは沸かし湯であり、壁のヒノキと浴槽のサワラの風合いを楽しみながら入浴するところ。1組ごとに湯を入れ替えるという気遣いがうれしい。

 

八寸。殻の付で火を通した銀杏は粉状にすりつぶした岩塩が殻にまぶしてあり、手でむいていくと、ちょうどいい具合に実に塩がつく。実はまだアツアツで旨い。子持ち鮎の煮付けは骨がほろほろとほどけていくまでじっくり煮込んである。

 

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あけびの天ぷらがアツアツで運ばれてきた。新米も稲のまま天ぷらに。くるみ、きのこ、みょうがを合えた味噌がうまみを盛り上げる。つづいてアユとマイタケの炭火焼が 焼き立てで運ばれてきた。マイタケは少しハーブで味付けしてあるようだ。その豊かな風味の感動!

 

ニジマスのカルパッチョはオリーブオイルがかかり、イタリアンな風味。茶碗蒸しはマツタケが入ってる!デザートは黒蜜とぶぶあられのかかったアイス。すべて手作りの料理、一気に平らげた。契約農家から仕入れる米は何よりもご馳走はであった。

 

【したの湯】3軒の宿が共有する木で造られた湯小屋は風情たっぷり。むき出しの梁が渡る、ほの暗い湯小屋の中、ライトが湯口を浮かび上がらせる。湯を触ってみると、なるほどぬるい。このお湯は35℃くらいしかなく、みな2から3時間くらい入るのだそうだ。

気がつくと体が泡だらけ。羊水に包まれている感じ。時々プクリ、プクリと音を立てる。この泡を体にくっつけておけば少し温かいことが分かった。隣のおじさんは単行本を読みながら入浴。私もα波をだしながら、あっという間に2時間が過ぎた。

 

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ご主人と若女将がイメージしたのは、ご夫婦、カップル、湯治のお客さんが違和感なく過ごせる宿。そのため一人客 用の客室も用意されている。最近一人旅の女性が増えているようだが、うってつけかもしれない。

 

 

ラジウム泉ははじめての経験でした。しかも全国2位のラジウム含有量と聞く。ラジウム泉というのは放射性の湯なのだが、極微量の場合、細胞の老化を防ぎ活性化させる抗酸化作用があり、体にいいらしい。栃尾又温泉では源泉のすぐ近くに湯小屋をたて、これを3軒の宿が共有する。それは湯船のお湯の質を最優先に考えたつくりなのだ。今の時代は各旅館に温泉が引かれていることが当たり前だが、湯治もできる温泉は本来この姿が理に適っているに違いない。お湯の温度がぬるいだけに、湯上り直後はあまりあったまった印象はなかった。ところが体を乾かして少し歩くとがんがんに体が温まってきた。その晩はぐっすり寝て、翌朝すっきり起きた。  なによりうれしかったのはこの宿の料理。旨い!山のもの、土地のものを使った料理だが、ハーブやオリーブオイルなどを使った料理はバリエーションが豊かでとっても満足でした。アケビの天ぷらがこんなに旨いものか、マイタケの炭火焼きには心から感動!料理に出てくる料理がこの近辺で採れる食材を教えてくれる。しかもただの田舎料理ではなく、若女将たちがアイディアを絞って一生懸命 つくる山の創作料理。心づくしの料理とはこういうことだろう。日常の延長にほしくなる宿。次回は小上がりのある部屋に布団をしきっぱなしにして、気ままにゴロリしながら連泊してみたいと思った。

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