緑豊な蓮山に抱かれたよもぎ埜の贅沢は、13室の客室がすべて書院造りの”離れ”として日本庭園の中に点在していることに始まる。喜多方の蔵造りがベースになっているモダンなレンガ造りの本館。照明のほの暗いロビーにいると、正面の出窓の先に見える緑が眩い。

 

中庭を囲むように13の離れ家。通された部屋は胡蝶。10畳+8畳の続き部屋、広縁からは庭園を望む。襖、障子、欄間、床、建具の造作ひとつひとつがしっくりと結びついていて質の良さを感じる。

 

日本一小さい庭風呂というのを30分貸切で利用した。庭風呂の生垣の向こうは草庵式茶室。手入れの行き届いた庭に、飛び石、水琴窟が見える。岩風呂も大きくないが地面に埋まった水がめのようなお風呂はもっと小さいからきっとこれが日本一なのだろう。

 

お湯は無色透明、無味無臭。湯につかってすぐ、肌の表面がとろっとしてくるのがはっきり分かる美肌の湯。

 

本格的な懐石を部屋食で頂く。先付けから一品一品部屋に運ばれてくる。繊細な盛付けに加え、器の美しさも楽しみの一つだ。八寸にのった鴨のロースがうまい。あじさいのチーズ、これだけでもお金を払って食べにきたい味。

 

かき氷の上にのせられた造りの鯛は、甘いこと甘いこと。大トロは質のいい脂がたっぷり。器は織部だろうか。

 

筍まんじゅう。細かく刻んだ筍と蟹のほぐしたものでつつみ餡かけに。

 

ロブスターの天ぷら。カシューナッツを砕いて衣のようにつけてある。香ばしい。アルコール類のリストを見ると、地酒が20種類以上、さらにワインも20種類近く、洋酒、焼酎ビールもそれぞれ多種そろっている。かなり力の入ったラインナップと見える。

 

廊下には大女将のコレクション。絵画、版画の数々。加山又造、川合玉堂といった有名画家のリトグラフ(石版画)、浮世絵など美術館さながら。あとは図書室で淹れ立てのコーヒーを飲みながらしばらく過ごした。

 

 

 

滞在中わが連れは「何か特別な扱いをされているよう」とうれしそう。それは食後にいつのまにか用意されている替えの浴衣だったり、自動で灯る照明だった り、料理長お手製のお茶請けだったり、客室のお風呂にも当たり前のように温泉が引かれていたり、調度の趣味がよかったり、庭のつつじが綺麗なピンクだった り・・・。 押し付けがましくなくそこかしこに小技が効いている。いろんな気遣い。そんな細々とした積み重ねが嬉しいらしい。 「でしゃばらずに、いかに快適に滞在をサポートするか」それがもてなしのテーマだという。だから「何を置いて何を置かないか」にはいつも頭を悩ますそう だ。 1時間かけて朝食を食べたのにチェックアウトまでまだ2時間もある!ということで露天へ行くと向かいは蓬山の緑。手前には黒瓦のモザイクが敷き詰められて いる。ここは2階部分。木々の合間に点在する各棟の配置が見て取れ、あらためてこの宿の贅沢さが分かる。檜の風呂は2つあり前日は男時間と女時間に分かれ ていたが、朝は間に仕切りが入り、別れてはいる。 1階から生えた木が屋上にある露天に覆いかぶさって手が届きそう。部屋に戻り連れに「桜の木だったね」と言うと「じゃ次回は4月だね」と危うく約束させら れるところであった。 ともあれ私たちは上質な空気につつまれ、宿を後にした。[clear]

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