いかにも北海道らしい景色の十勝平野にある十勝川温泉。写真からも澄んだ空気が伝わるでしょうか?
「外の景色と一体化している」。吹き抜けのロビーに立った時、直感的にそう感じました。愛知県の三州いぶし瓦を床に用い、「ハンノキ」や「ヤナギ」の自然木で十勝の風景を再現しているそうです。
モール温泉はこのようにビールのような琥珀色をしています。葦などの自生植物が長い時間をかけて堆積した亜炭層から湧出する温泉で、植物性(モール) の有機物を多く含み、天然保湿成分を多く含むそうです。ドイツの有名なバーデンバーデンもこれと一緒の泉質なのだとか。
こちらは露天風呂。イタリアから輸入したガラスタイルはどことなくレトロモダンな雰囲気でいいですね。
部屋へ向かう通路は闇と見まがうほどに暗い。視界を奪われ驚いていると、廊下に漂うアロマオイルの香りが心に安息をもたらした。
部屋に入ると、対照的 に穏やかな明るさがふわりと客を迎える。手塗りされたリビングの漆喰壁や、寝室の手漉き和紙が間接照明の灯りに浮かび上がる。
前菜7種盛りとフレッシュレモネード。ホタテや卵黄、十勝産豚のしゃぶしゃぶなどのおなじみの食材なのに「こんな味になるの?!」というちょっとした驚きがある。
十勝牛とタラバガニを炭火焼は5種類のオリジナルシースで頂く。ワインとポン酢のソース自家製香味醤油、オープン以来継ぎ足しして使うごぼうとバルサミコのソースなど、食材の色々な持ち味を引き出す
鮭児(けいじ)ですよ鮭児。鮭の一万分の1の確率でしか獲れないというあの幻の魚です!豊かな脂のその上品な旨み。うまかったぁ。
三余庵のロビーは外の自然と同じ歩みで時が進む。日が落ちると、ロビーにも同じように夜の帳が下りる。外に静かな闇が訪れる頃、ロビーは夜の森に迷い込んだかのような不思議な雰囲気。月明かりに照らされているかのような“おぼろ”な照明が心憎い。
日中のヒーリング音楽にかわり夜のバータイムには静かなジャズが奏でられるが、夜が更にふけてくるとここも無音になる。不思議な静寂が支配する夜のロビーがとても気に入りました。
心憎いばかりに洗練された空間。とても心地よかったです。
特に夜のロビーが忘れられません。
月明かりに照らされているかのような“おぼろ”な照明が心憎い。 日中のヒーリング音楽にかわり、夜のバータイムには静かなジャズ。 夜が更にふけてくるとここも無音になります。三余庵の中に十勝の大地の自然が再現されているかのようです。 布団に入る前のちょっとした時間をこの無音の中で過ごすと、神経が休まりいい気分で眠りにはいれます。 三余庵のテーマは「五感へのおもてなし」。目、鼻、口、耳、肌を刺激して、神経をのびのびと遊ばせるという。 その明確なコンセプトをもった、デザインコンシャスな宿が北海道の十勝にオープンしたのが2003年1月のこと。 1日わずか11組を迎えるこの小さな宿が全国的に注目されるのに時間はかからず、 女性誌などの「憧れの宿」特集では、以前に紹介した蔵群と並んで常連の宿。 なのでご存知の方も多いことでしょう。
料理も工夫されています。北海道は食材の宝庫。畑のものから海のものまで、 食材の力だけでもある程度お客を納得させられるものが揃う土地です。 その食材の持ち味を十分生かしながら、ちょっとした驚きとともに一つ質の高い料理にしてくれます。 食事処から見えるところにあるオープンキッチンからは料理人の動作、声、料理の匂いがダイレクトに伝わり、 ライブ感あるディナーが始まる。 その料理はフレンチのようなきれいな盛り付けもあるが、食べてみると出汁の香りが漂う和の料理であることに気づく。 さらに食材についても産地指定やで仕入れるこだわりをみせる。 メインディッシュには十勝牛とタラバガニを炭火焼に。 5種類のオリジナルソースで頂く。これをどのソースにつけたら旨いか・・・なんて想像しながらが楽しい。
各分野のスペシャリストたちの見事な仕事で、三余庵には洗練されたた空間のなかにも バックグラウンドにある十勝の原風景がそこはかとなくにじみ出ている。
“デザイナーズ旅館”としてとりあげられることも多い宿のだが、 この宿の居心地、それはマニュアルどおりではなく自分の言葉で話すスタッフにも支えられている気がします。
「○○さん」と名前で呼ばれるものだから、こちらも親しみを感じて話しかけたくなってしまいます。 「北海道の冬こそ都会の方に見て欲しいんです。」だれにも踏まれていないシルクのような雪の表面。 抜けるような青空、音のない世界・・・。ゆったり過すにはこの上ないらしい。 スタッフと交わしたこんな何気ない会話がなぜか旅の一番の思い出だったりする。 朝食まで少し時間があるのでロビーのロッキングチェアに身を預ると、 ぼんやりと眺めるた外の芝生には朝日があたり、葉を落した白樺の木が絵のよう。
優れたデザイン、自然との調和、館内に漂うアロマ、静かな大人の空間、そして ハイセンスなのに意外に肩の凝らない居心地。 あのアロマの香りをどこかで嗅ぐことがあれば、私の心は一瞬にして 三余庵へとトリップすることでしょう。[clear]