朝。目が覚めて朝風呂へ。

夜の間に男女の風呂場が入れ替えになっていて、こちらは前日とは違う風呂場。

 

居心地のいい風呂は、無色透明な湯になんともいえない美しさを見る。

お湯はこんなふうにオーバーフローしています。

 

気持ちいい朝日が差し込む中で朝食です。にっぽんの朝ごはんです。

無農薬栽培の雑穀、米山さんが漬けた梅干、アジの干物などなど。

 

ありがたいな~、こういう朝ごはんは。
雑穀は赤米、黒米、珍しいところで緑米というのが日替わりとなるそうだ。

 

小田原 風間豆腐店の湯豆腐

 

さて、草履の紐を絞めるとしましょうか。

 

次回は連れを伴って、連泊で養生の旅とまいりましょう。

 

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「養生」という湯治

温 泉ビューティー研究家の石井宏子さんがこの宿に数日滞在して、原稿を書くのに具合がよかったと書いているのを見て

「おっ、そんあ文豪チックなことを。自分 も真似事でいいから」

と思い立ち、訪れたのだ。オープンしてまもなく石井さんが訪れるなんて、なんと縁起のよいことだろう。
日本旅館では一人客は特殊な客。一人での宿泊をごぐごく当たり前に受けてくれる宿ってありがたい。
本来は2泊以上して、チェックインもチェックアウトもない”間の日”をゆっくり過ごし、生き物としての本来の自分を取り戻すと言うのが宿の提案なのだが、 いまだけ”お試し”ということで1泊の宿泊プランがあったので試してみることにした(そういう意味で、今回はこの宿の本来の持ち味を味わいきれないかもし れない)。

「箱根」とひとくくりに言ったところで、どこの辺りを指すのかは人によって様々だろう。
古くは「箱根八湯」と言ったらしいが今では今では箱根二十湯にまで増えている増えているらしい(ありがとうwiki)。箱根湯本は箱根八湯のころの、いわば創立メンバーみたなものだ。

国道1号から外れたそこに細い道が通っているのは知っていたが、

「この道どこにつながっとるんやろう?」

などと思いながら、終ぞその道に入ったことはなかった。
というわけで箱根で一番古い箱根湯本温泉がここにあることを最近知ったのだ。箱根湯本駅周辺の賑わいとは違う、路地裏感がある。車で先へ進むと茅葺屋根が 見えたので寄ってみた。400年の歴史がある甘酒茶屋らしい。茶屋の近くには石畳の道が発掘されたらしく、そうかこの道がその昔「天下の険」と言われた昔 の東海道なのかと理解した。

目当ての宿はこの旧東海道沿いにある。
車の無かったころにできた道だから道幅が狭く、坂道に建物がせまっていて、古くからの温泉街の匂いがどこと無く感じられる。
ただし、車の往来は少なくないので浴衣で歩くような風情があるかというと、それはちょっときびしい。

 

株の切り身、いつもよりじっくり味わってみよう。

おだやかな料理だった。

日本の旅館のほとんどの料理はハレの日の料理だ。見た目を華やかに飾り、インパクトのある味で食べる人を興奮状態にし記憶に印象付ける。これは外食産業に通じる。
はるのひかりの料理はそれとは違うところにある。
無農薬の路地野菜、雑穀、発酵食品・・・見た目に派手ではない。
芋は芋の姿が、大根は大根の姿が見えている。そして主役も脇役も無い。
余分な飾りも無く、その代わり餡を纏ってころころした芋の曲面がなんとも愛らしく見える。
それらが野菜のエグ味を残した田舎料理としてではなく、技術をもった料理人による、上質でやさしい味付けを纏って朱色の漆器に盛られる。インパクトをぶつ けて来るのではなく、「おやこのやさしい味はなに?」と探しにいきたくなる味付けだ。一つのお芋の味、汁の風味、玄米を噛んでいく中での味の変化に意識が 向かう。「次は株の切り身、いつもよりじっくり味わってみよう。」などと考えながら。
主の米山さんは農学部で発酵食品を学んだ人。なので梅干、納豆・・・いろんな発酵食品がでてくる。さらに自家菜園もあり、宿の仕事が一段落すると畑を耕しに向かうようだ。

 

「八里先」を目指して歩き出す。

宿場町は、旅人が一日で歩けるだいたい八里くらいの間隔で栄えたそうだ。
現代ならば、ぼくらは一日あれば宿場町をいくつも飛び越えていける。でもぼくら現代人の生活は決して健康的ではないし、心の中はさらに不健康だったりす る。立ち止まることが許されないような錯覚のなかで生きている。だから体を休める以上に、心を取り戻すためのなにもしない休暇があったなら・・・。

養生の宿は気張って行く宿じゃない。気取って過ごす宿じゃない。
日常のサイクルにうまくこの宿を組み込んで、部屋の床みたいにすっぴんさらして過ごしたらいいだろな。

朝 の光にまどろむような茅葺の母屋を眺めながら、生気をとりもどして峠へ歩き出す昔の旅人と自分を重ねて遊んでみる。わらじ姿の旅人が、箱根越えを明日に控 え、もしくは京からはるばる峠を越えてここいらの旅籠(はたご)に逗留したであろう。熱い温泉の湧き出ている宿場町というのはさぞかしありがたかったにち がいない。

ぼくも「八里先」を目指して歩き出そう。
到着は、湯守りの米山さんが育ててるホタルが舞っている頃かな。

 

 

 

箱根湯本温泉 養生館はるのひかり (1/2)
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