山形県 月山山麓 出羽屋
日帰り 2010年11月
お部屋 一般的な和室

 

 

宿泊ではなく、日帰りのレポートです。月山、湯殿山、羽黒山の出羽三山は山岳信仰、修験者の山。街道筋には宿場町ができ、今に残る行者宿の一つが出羽屋ということのようだ。その雰囲気は、入り口に色濃く残っています。

 

10年ぶりの出羽屋。「変わってないなぁ」。帳場奥にガラス張りの従業員室があるのって最近見ないつくりですね。右手のみやげ物売り場では山菜も売られてました。

 

コース料理(といっても山菜そば付定食が2,310円、安いっ!!)を予約すると部屋を用意しておいてくれるようです。写真の奥があけびの味噌煮。とろしとした舌触り甘みのあとに心地いい苦味。左がかたくり干の昆布びたし。右はきのこ類だが名前を忘れてしまった。

 

なめこおろしは驚くようなメニューではないが、その味におどろいた。なんて香ばしいんだろう。広がる味の豊かなこと。奥は紅花の辛しあえ。紅花はこの辺りの特産だが食べれるとは知らなかった。シャキっとした歯ごたえでわさびにも似た辛さ。

 

奇麗な器にこごみのゴマ和え。春に採って保存してあったと思うが、なぜこんなに新鮮なの?ゴマの風味もすばらしい。

 

こちらはコースには無い別注料理「あけび焼き」。ふたを開けるとぷーんと甘いにおいが上がってきた。あけび、まいたけ、かのか?すこし苦味が味噌とよくからむ。

 

出羽屋の「名物山菜そば」。いまではこの地域の名物にもなりつつある。山菜がはんぱではない。なんと贅沢!

 

山菜の味が代わる代わる口の中ではじける。次から次えと生まれては消える。きくらげのプルプル感。名も知らぬいく種類もの山菜をそばと一緒にかきこむ。大満足。

 

庭を囲むように渡り廊下が建物をつなぐ。11月ということで木々には雪吊り・・・ではなく雪囲いだ。よほど降るのだろう。

 

 

昔いったことのある場所に行くというのは、昔の自分に出会うという出来事です。今回は宿泊ではない、日帰りレポートです。  古くから信仰の対象である出羽三山のひとつ月山。そのふもとに山菜料理の名店があります。どれだけの存在かというと、あのホンダの創始者 本田宗一郎さんがヘリを飛ばして食べにきたそうでからね。むろん、宗一郎さんは札束で顔を扇ぎながら芸者あそびをしに来たわけではない。そうそう、他に岡本太郎氏も。諏訪のみなとや旅館といい出羽屋といい、岡本せんせは選ぶ宿が渋いな?。超有名人の名が出るとついつい立派な宿が思い浮かびますが、出羽屋はそんなエピソードとはうらはらの素朴な山菜宿なのです。  月山、湯殿山、羽黒山の出羽三山は山岳信仰、修験者の山。そのうちの月山は日本の神話の月の神、月読命(つくよみのみこと)が祭られているから月山なのだということを今回の旅ではじめて知った。昔は三山参りの行者があとを絶たなかったそうで、街道筋には宿場町ができ、今に残る出羽屋もこのころに生まれた行者宿だったそうだ。 その雰囲気は、入り口に色濃く残っています。近年宿の前の道路が広くなって便は良くなったのだろうが、あの狭さもあれはあれで味があったんだけどな。  さて、久しぶりの出羽屋。何年ぶりか。思い出せないくらいだ。前のレポートを見てみたら2000年9月と記されている。あぁ、ちょうど10年が経ったのか。「変わってないなぁ」。同時に10年前の自分ともそこで出会うことになる。あのころの気持ちが懐かしく蘇ってくる。出会う宿、宿がすべてもの珍しかった。スレてなかったと言うのかもしれない。そうそう、あの当時は山菜どうのこうのは二の次で「あの風格有る入り口の宿の中はどんなになってるのだろう?」というのが僕の興味の中心だったのです。日常の世界があわただしくどんどん前に進んでいる中で生きていると、その流れに乗ってないものは止まっているどころか後退しているよううにも感じてしまう。ここは時間の進みがのんびりしているんだろうな。行者宿のころからのんびりしてるんだろうな。  月山山菜そばはこのあたりでは郷土料理のようになっているが、そのもとは出羽屋らしい。これが生まれたのは、飛び込みで来店した大人数のお客様に急遽対応を迫られて、囲炉裏にかけられていた山菜のなべに「えいやっ」との気持ちでそばをいれて振舞ったらたらこれが評判になった。怪我の功名。山菜の味が代わる代わる口の中ではじける。次から次えと生まれては消える。きくらげのプルプル感。名も知らぬいく種類もの山菜をそばと一緒にかきこむ。  山菜は見かけは似ているが味、歯ごたえも様々で、それらを白ごま、黒ごま、くるみなどで丁寧においしさを引き出してくれている。なんてバラエティー豊かなのだろうか。 山菜料理のわりに器には雅がすこし漂う。出羽屋には古い伊万里の器がいくつも残っているそうだ。北前船が日本海を行き来してたころ、この地の特産である紅花が遠く都まで運ばれた。当時大変高価だった口紅の素だ。その帰りに船を安定させるために船底に器を乗せて帰ってきたということだそうだ。 部屋には「出羽屋の山菜料理」という本が部屋に置いてあった。山菜料理のバイブルといってもいいのではなかろうか。山菜料理を食べながら、この本を読むと山菜ワールドに入っていき、食べている山菜が何倍も美味しく、ありがたく感じてました。 山菜取りの名人が毎朝毎朝人の知らない深山まで雪を超え川を渡り、遠い山奥まで足を運び採ってきてくれる。素人が山に入ってもちょっと見つける事が出来ない気むずかしい山菜もある。それがこの料金で食べられるとはありがたい。 また、「自分たちが日ごろ食べているようなものを客様にだしていいんだろうか?」という戸惑いも記されていて面白い。 山のものは じぶんたちだけが、くうやつだと思っていたんだけんども お客さんが わざわざ来て んまえ んまえゆて よろこんでけるなんて ありがたいことだなっす 佐藤邦治 宿を後にするとき、年のせいか10年前よりもっともっと山菜が好きになっている自分に出会った。

 

Leave a reply

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です