2022年10月に宿泊してきました湯浜温泉 ランプの宿 三浦旅館のことを動画で宿泊レポします。

湯浜温泉 三浦旅館へ泊まってきたときのお話をします。
場所は宮城県の栗原市、県北の方ですね。

道のり

さてランプの宿、つまり電気の通ってない秘境ということで相当の山奥を想像させるわけですが、オフロード車が必要なくらいの悪路を行くのかといえばそうでなはく、実際はこういう道です。宮城と秋田をむすぶ国道が近くを通っていて、ファミリーカーのサンデードライバーでも普通に来られるところです。

ちなみに動画を撮り始めたところは温湯温泉の佐藤旅館のあたりから。
この栗駒山の花山峠、その宮城県側に3つの秘境の温泉がありまして、それらをまとめて「花山三湯」という呼び方がありました。里に近い方から「温湯温泉 佐藤旅館」「湯の倉温泉 湯栄館」そして本日の宿「湯浜温泉 三浦旅館」です。
うち、湯の倉温泉 湯栄館と湯浜温泉 三浦旅館は電気が通っておらずランプの宿として知られていました。ところがです。2008年に「岩手・宮城内陸地震」が、このエリアを襲いました。各所で山の斜面がごそっと崩れてしまっている映像を記憶しているかたもいらっしゃいますよね。

まもなく湯浜温泉に到着なんですがその前にちょっと寄り道にお付き合いください。
この道は、湯浜温泉を通り過ぎて10分ぐらい走るともう秋田県なんです。その県境から20分くらいで到着する小安峡。

小安峡

小安峡は皆瀬川の急流が長年にわたり両岸を深く浸食してできたV字峡谷。60メートルほど降りていくと川沿いに遊歩道がつくられているんですが、ここがなかなか面白いです。
まさに火山帯どまんなかといった感じですね。いい温泉が湧いているに違いありまっせん。
これだけ温泉が流れ込んでいれば流石に生き物など住めないだろうと思いきや、この川が緑色なのは温泉微生物というものによるものらしいです。看板によると60℃以上でも生きられるものや、中には120℃くらいまで耐えれれるものもいるようです。

なかなか刺激の強いとこでしたね。
ではお宿へ向かいましょう。

 

到着

車を停めてお宿までは徒歩で10分ほど。
川沿いを歩くようです。
途中3組の方ととすれ違ったのですが、みなさん登山の格好で、しかもみんな鈴をリンリンならしているんですよ。旅行カバンを運びながらのぼくらの「お気楽旅行」の格好はわりと場違いだとおもいます。あと鈴をぶら下げてるということは「クマ出るん?」となってちょいビビりました。あとで分かったんですが、この道は登山道の入り口でもあり、すれ違ったのは湯浜温泉のお客さんではなく、本気の登山の方たちのようです。
靴はですね、もちろん登山靴がひつようなわけではないがスニーカーあたりは必要で、さらに10分歩くので旅行カバンではなくリュックがおすすめだそうです。

ランプの宿ってちょっと「興味をそそられませんか?
でも、「じゃぁ行ってみよう」となるには結構ハードルが高いと思うんですよね。
まず、とんでもない山道を歩かされるんじゃないのか?
雑魚寝があたりまえの山小屋みたいなものなんじゃないか?
宿には偏屈じぃさんがいて、独自ルールに辟易するんじゃないか
清潔感、たとえば布団やまくらがやばい匂いなんじゃないかとか、
トイレするなら野でしたほうがまだましみたいな感じなんじあないの?
連れがいるとなると正直この最後の2つの清潔感という部分が大丈夫なのかというのが心の壁なのです。

さてどんなお宿が待っていることでしょう

こんなところに温泉が噴き出してますね

宿が近づいてくると弱い硫黄臭、そしてすこし焦げたような油臭が混じった匂いがしてきました。

なにか人工物がありますね
露天風呂のようです

視界が開けました。ここが宿の敷地のようです
右手にテントが見えます。近寄ってみると話し声が聴こえてどうやらお風呂のようです。
ワイヤーに注意ってありますね。何でしょ。わかりますか?
こういうことですね。山道を運べないいろんなモノを川の反対側からこれで運ぶようです。

お宿につくと、これが拍子抜けするほどちゃんとした建物で安心しました。
(じつはボロンボロンな感じを想像してました)
敷地内には山の水が流れていてクレソンが生育されています。
この建物には自家発電機があるようですね。
発電機がうーんとうなりを上げているのが聞こえています

顔を出したのは若旦那

部屋

部屋を開けるとランプの燃料の焼けた匂いが部屋に漂っていて、なんだか懐かしい気持ちになりました。
電気はないので窓からの自然の明るさのみです。
部屋は想像していた以上に清潔で、快適そのもの。
畳なども擦り切れてるところもなくて感心しました。
(ぼくの仕事場の畳の方がよっぽどくたびれとる)
ちなみに部屋の鍵はありません。内鍵で鍵というか正しくは錠を閉めれるようにはなっています。

無垢板を使ったテーブル、いいですね

そしてタオル、浴衣、歯ブラシ、そしてバスタオルまであります。思いのほかちゃんとしています。
それでは温泉へまいりましょう
お風呂は館内に内湯が男女1ヶ所づつ、そして2か所ある露天風呂の方は、この時は両方とも貸切利用となっていて、行く前に帳場で
「露天風呂空いてますか?」
「テントの方はいま入ってますけど、川沿いの方は空いてますよ」
こんなやり取りをしました。
常時こういうやり方なのか、たまたまこの日は客が二組だけだったからなのかはわかりません。

 

渓流の露天風呂

自然の中で素っ裸になりました。
なんたる非日常。
(ここに温泉が無ければただのやばいヤツ)

そして、温泉につかるとこればマジで素晴らしいお湯。
まぁ正直僕自身はお湯のことは無頓着なのですが、連れの反応を見ていると、相当気に入ってるようです。もちろん源泉100%。温度もちょうどいいです

泉質はアルカリ性を示す単純硫黄泉とのこと。
僕などはつい思い込みで、「硫黄泉は酸性に決まってる」と錯覚してしまうんですがこれは多分に青森の酸ヶ湯温泉の影響なのですが、ここはアルカリ性です。
でも確かに酸ヶ湯温泉の湯上りの感じとはまったく違います。酸ヶ湯のほうは湯上りなのにどこか汗ばんだような独特な感触が残る印象でしたが、ここはとにかくさっぱりとしていて、そしてスベスベします。連れがなにより喜んだのがこの湯上りの肌の状態です。
お宿の若旦那は、これはメタケイ酸の濃さが影響しているのだろうと話していました。

 

湯上り処

いったんこちらで休憩してから

<テントの露天風呂>
つづいてテントの露天風呂へ。
お風呂に入っていたら一気に日が暮れてきた

<ランプの灯る部屋>
部屋に戻るとランプが付いていました。
布団は自分たちで敷きます。
そろそろ夕食の時間のはずです。
部屋がこれだけ暗いのだから、夕食は闇鍋状態だなとおもっていたんですが

 

夕食

食事処に来てみると自家発電で電気が灯っていてごくごく普通に食事ができました。
ということで雰囲気に驚きはなかったのですが、食べ物は結構驚きました。
正直なところお料理、全く期待していなかったのです。
「こんな山奥なんだから、食べれるだけありがたいと思おうよ。」
的なものかと思ってたんです。

(ミズの実)
「ミズの実だね」と、隣で食べてるおじさんが教えてくれました。渓流のそばに生えるものらしいので、この近くでとってきたものなのでしょう。どうやら貴重な代物のようです。
醤油をちょっと垂らし口の中へ。シャキッとヌルっの食感。これがなかなかいいんです。これぞ山の宿の楽しみです。

(煮物)
こういう煮物なんかも上手に味付けしていてホントいい味です。

(根曲竹)
根曲竹でしょうか。

(ごはんのおとも)
ごはんのお供みたいなものです。全体的に器もちゃんと気づかいがありますね。

(とんび舞茸)
連れの心をとらえてしまったのがこの天ぷらのとんび舞茸
舞茸は通常楢の木に生えるらしいが、これはブナに生えるらしい。菌は同じなのに生える木によって違う味になるんですね。たしかに本当にうまかった
冷蔵庫とかなさそうだからその日のうちに採ってきたものなんでしょうかね。

(岩魚?)
塩焼きは岩魚でしょうか?
薬味としてまたたびがありました
(またたび)
よくまたたび酒になるやつですね。ちょっと薬っぽいスパイシーさがあって好き嫌いの分かれるとこをのようですが、自分は気に入りました。

(ゼリー)
ゼリーも手づくりのようですね。山ぶどうなのでしょうか。かなり濃い味で舌と喉が少しピリピリするような刺激があり、これも他では食べたことのない美味しさでした。

 

テントの露天へ

まぁやることもないのでまた露天
熱くて断念。
夜中に入ってもよいのだそうだが、湯の温度はあばれるそうです。

<内湯>
締めのお湯は内湯にて。
とても清潔なんですよ。驚きます。
やっぱり木のお風呂はいいですね

就寝

静けさの中、 ランプがともるのみ。
まだ10時前だと思うのですが真夜中の気分です。早速ねました。
おやすみなさい

 

朝食

おはようございます。
いや〜ぐっすり寝ました。
朝食です。夕食と同じ広間で頂きました。

(温泉卵)

(しそ巻)
これはシソ巻きといいまして、宮城県のとくにこの県北の郷土料理。味噌をしそで巻いて油で揚げてあるのですが、ご飯が進みます。

(米)
ササニシキ
こめが美味しい美味しいと連れが言ってました。

(ぴーちゃん)
ご飯を食べてるとぴーちゃんがストーブに温まりに来ました。
前の日の到着の時まで時間を巻き戻しますと、帳場にいる僕らにぴーちゃんがキャンキャンいいながら近づいてきて匂いをかぎ始めました。どうやら受け入れてくれたようで体をなでさせてくれたんですが、「そろそろ部屋行こうかな〜」と思うんですが「もっと撫でろよ」って目でこっちを見るんです。可愛かったです。

 

 

さてランプの宿、今日本にどれくらい残っているのか気になりませんか?
これはお宿仲間が調べてくれたんですが一口にランプの宿といいますが、いくつかのタイプに分類した方が良さそうです。
ひとつめは「ランプ型の電球の宿」 つまりアルコールではなく電気でランプをともしている。
ふたつ目は「電気は来ているんだけど、演出としてのランプの宿」 石川県の葭ヶ浦温泉 ランプの宿だったり、実はあの青森の青荷温泉もこれなんですね。
そして最後に「電気が来てなくて本当にランプが頼りのランプの宿」ただ自家発電はしている場合も含めます。
それが今回の三浦旅館であり、以前にアップした岐阜の渡合温泉です。登山者のための山小屋を除くと、このタイプはいま日本には4軒のみなのではないかというのが、お宿仲間の見立てです。

さてランプの宿、一晩過ごしてみてどうだったか。
まず不安に思っていた点から解決していきましょう。
①布団、まくらについて不快に感じることはなにもありませんでした
②虫に悩まされることもなかった。ちなみにお部屋にはカメムシが5匹。ガムテープで貼り付けさせてもらった
③トイレは当然ぼっとんなわけですが、掃除は行き届いていているので多くの人にとって問題ないレベルだと思います。

そして川沿いの露天風呂です。
こういうことが体験できるのは、探せば無いこともないですが、確実に数は減ってきていると思います。例えば先ほどお話ししました湯の倉温泉の湯栄館、以前動画にしました長野の山田温泉 風景館にも同様の渓流そばの野天風呂があったのですが、いまはクローズになってます。やぱり自然相手なので風呂のメンテナンスがとんでもなく大変みたいなんですよね。川が氾濫して風呂場が流されてしまったという話はいろいろなところでききます。

電気の通ってない秘境の宿ということで、
非日常どころか、ある種の怖いもの見たさのような気分で旅に出ました。
もう日本に数えるほどしか残っていないランプの宿、渓流の側の露天風呂と素晴らしいお湯、そしてここに来ないと食べられない摘み草のような料理。
山の谷地にひっそりと開けたこの一角が、特別なもの集まりであることを知る旅となりました。

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