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さておまちかねの夕食。

食事に席に着くと外はまだ明るく、畑が山の陰に少しづつ覆い隠されていく。
この時間の移り変わりを横目で見ながらディナーが進められる(窓に面してない席も有るが)。

薪の音流のフレンチの持ち味は、ご主人や農業仲間たちが育てた野菜たちと富山湾の海の幸のコラボレーションだと思う。若きシェフがそれを皿に表現していく。

 

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アミューズが運ばれてきた。
稚鮎とアボガド、トマトのピリカラソース。大門そうめんと甘海老のうめ風味。

鮎のほろ苦さが香ばしくアボガドが消えたあと、トマトの爽やかさがトーンと抜けてくる。
大門素麺(おおかどそうめん)とは”より”をかけながら細く伸ばしていく、富山県民ならば誰でも知っている(たぶん。)、砺波地域伝統の腰の強い素麺だ。

 

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見てください、この素敵なプレゼンテーションを。
これが運ばれてきたとき私たちの心は色めき立った。そして「初夏の富山の海の中」と、ゴロはよくないけど勝手に命名した。

メンバーを簡単に紹介すると、
鯛の造り。富山湾の宝石と称される白海老はフライで。燻製にされたホタルイカ。じっくりと奥までいぶされ、スモークがワタと結びついて未体験の不思議なおいしさを生んでいる。スライスしたカブにのせられているのは、こちらも軽く燻したブリで、つぶ胡椒がまぶしてある。

ここではたと気付いた。
富山にはかぶら寿司といって、ブリとカブを麹で漬け込む冬の郷土料理があるが(発祥は石川県らしい)、この組み合わせはそのフレンチバージョンではないか。そんなシェフの遊び心が楽しい。

 

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ごぼうのスープとチーズ・玉ねぎ・ベーコンのキッシュ

サラサラとした口あたり。ごぼうがこのときばかりはミルキーで上品な風味。なぜかごぼうの泥臭さがなく、ホッと癒し系の味。

 

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私などは”フレンチ”となるとちょっと身構えてしまう性分だけど、薪の音でははじめてきたときからその手のプレッシャーを感じることがなかった。
ここでは堅苦しいマナーなどいらない。もちろん食事処へ浴衣で行くのも問題ないだろう。
(ちなみに就寝用の浴衣のほかに、館内着の浴衣も用意されている。)

会話が弾む。この宿の空気がそうさせるのだろう。

 

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 口直し。2色のグレープフルーツのシャーベット

口の中のセンサーを磨きなおして肉料理を待つ。

 

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五箇山の筍と軽やかなサシの氷見牛のサーロインが熱せられた塩の石に乗せられて現れた。
ふきのとうのソースで頂く。

このなかで俄然存在感を発しているのが皮ごと熱した筍だろう。肉に負けず劣らずグイグイ前にでてくる。ワレワレとしては大歓迎だ。フィレ肉と筍との素敵なコラボレーション。

 

フレンチをよく食すかたならお気づきかもしれないが、薪の音流のフレンチは、定石であるバターや生クリームにあまり頼らない。ヘルシーで胃にやさしく、自然体の里山を体内にとり込む。

 

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デザートは4種類から選べる。
連れはアメリカンチェリーのヨーグルトアイスを、私はイチゴのヌガーグラッセを選んだ。
他にはチョコレートケーキ、柿のアイスがあったようだ。

実はこのあと部屋にもどってから連れに

 

 

 

なじられた。

 

 

 

食事中私たちの世話を焼いてくれたオーナーの娘さんから、

「もしお腹に余裕がありましたら、少しづつ全種類でもどうぞ♪」

という女神のようなお話があったらしい。言われてみれば、そんな気がする。
しかし「どれを選ぼうか」と、頭の中にはデザートの映像が充満していてちゃんと聞いなかったのだ。

連れはよほど全種類食べたかったらしい。

でも、欲張りだと思われたくなくて、こうい役はいつも自分に回ってくるのだ。

仕返しに、

 

 

 

ここで欲張りを発表しておいた。

 

 

 

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食後館内は静まりかえっている。静に漂うジャズの音。

 

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カッシーナLC1の向こうに黒漆で縁取られた障子戸が不思議とマッチしている。

 

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